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オペラ『金色夜叉』稽古場日誌(1月某日):富山直人

今回、私富山直人は、主人公 間貫一の同級生 風早 役をやることになった。

金色夜叉には、富山唯継 という役があって、それは うるおさんがやる。

稽古場で
「ここで、富山は…」
などと言われる時の富山は、富山唯継に関してであって富山直人でない事が多い。
稽古場での富山は唯継だと思っていると、たまに直人に関して言われる事もあるので、富山直人個人としてはとてもややこしい。

なので唯継でない富山は、稽古場では自分は風早であると思う事にしている。
家を出てから稽古場へ向かうまでに風早になろうとする。

駅までの道を自転車を漕ぎながら、風早のセリフをぶつぶつ呟く。
風早ならこの言葉をどう喋るか、とか考えながら…

「とんだご商売をお始めですなぁ」
違うな…
「とんだご商売を、お始めですな」
うーん…
「とんだご商売をお始めですな!」
ん?
「とんだご商売をお始めですな♪」
これかな?
「とんだご商売をお始めですな♪!」

と言ってたら、前を歩く人が驚いた顔でこちらを振り返った。

ぶつぶつセリフを繰り返すうちに声が大きくなっていたらしい。

その瞬間、風早へシフト中だったのが富山直人へ戻り、とても恥ずかしい思いをする…

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