音楽監督 萩京子の日々是:三演目稽古と初日巡り報告

「まっぷたつの子爵」が終わり、短い二月があっという間に過ぎ去り、三月はこんにゃく座三班活動の月です。
「森は生きている」「あおくんときいろちゃん」「注文の多い料理店」の三演目すべてに新キャストが入っているため、それぞれ短くも濃厚な稽古が行なわれ、各チーム旅立ちました。
この11日間のご報告です。

「森は生きている」
3月1~5日Aスタにて稽古。6日ゲネプロ。7日初日。
「あおくんときいろちゃん」
3月1~8日Bスタにて稽古。9日出発。10日初日。
「注文の多い料理店」
3月1~5日ベニサンスタジオにて稽古。6~9日Aスタにて稽古。10日出発。11日初日。


3月1日
Aスタにて「森は生きている」の稽古を見る。
新キャストは二月の精に佐藤敏之。
さとーちゃんは岡村演出時代は一月の精だった。今一月の精を演じている酒井クンは二月の精や四月の精をやっていた。
ひとつの作品で別の役をやるのは、役者として不思議な楽しみがあるだろうと思う。こんにゃく座の歌役者は、歌うパートだって、メンバーの組み合わせによって、高声、中声、低声を行き来する。
全パートを知って歌うのはとても良いことだと思う。
さとーちゃん、ビデオ学習の成果が素晴らしく、いきなりの立ち稽古なのに、大健闘。合唱も充実した響きになりそうで、期待が高まる。

3月2日
Bスタにて「あおくん~」の稽古を見る。
歌い手は川鍋、石窪、豊島で、皆「あおくん~」経験者だが、「あおくん~」は組み合わせが変わるとなにもかも変わってくるので、新作の稽古のようになる。
今回はピアニスト湯田亜希さんがデビューする。「まっぷたつ」の稽古中にがんばってプレ稽古を二回やった。
その甲斐あって、音楽も楽しそうになってきた。
「あおくん~」には出演者しか知らないキーワードがあって、それは「遊びの達人」。遊び上手、そして、なんでもないものをたからものにしてしまう子供の心が、「あおくん~」の身上である。

3月3日
ベニサンスタジオにて「注文~」の稽古を見る。
引越ししてAB二つの稽古塲を持ったというのに、もう別のスタジオを借りなくてはならないとは!ふうっ!
新キャストは鈴木裕加と佐藤久司。久ちゃんはとてものびのびとやっているように見える。ひろかはパネルを動かす段取りが大変そうだが、彼女のポワンとした雰囲気が作品全体を明るくしているように見えて、この新チームはうまくいくような気がした。

3月5日
午前、Bスタにて「あおくん」を見る。
演出の伊藤多恵さんに見てもらい、さまざまチェック。今回の稽古には演出助手として青木美佐子がついている。多恵さんとはあ・うんの呼吸。
午後、Aスタにて「森」の通し稽古。全体がよくまとまり、引き締まっていた。「森は生きている」は、森のシーンでの合唱が説得力を持つかどうかが重要だ。
久しぶりに森の合唱が力強く聞こえた。一年ぶりに四月の精を演じる島田大翼も昨年よりぐんとしなやかになって、梅村博美が扮する娘とのシーンも良くなっていた。私はいつも「森」に文句を言っているらしく、この日はめずらしく褒めたらしい。

3月6日
午後Bスタにて「あおくん」の稽古を見る。
歌とピアノのかけあい。音の立ち上がりに、しつこくしつこくアドバイスする。
南武線~武蔵野線~西武池袋線を乗り継いで移動。夕方より、東久留米の学芸大付属養護学校にて「森」のゲネプロ。体育館で上演するバージョンを私たちはTMと呼んでいる。
演出の高瀬さんによるダメ出しと返し稽古、9時近くまで。
その後、ピアノの大坪夕美さんに、テンポやニュアンスのボイントチェック。「もう閉めますよー」と言われて、慌てて体育館を出る。

3月7日
「森」初日。
体育館のすぐ横を西武池袋線が走っている。ゲネのときは電車の音が気になったが、本番では気にならなかった。子供たちは集中してよく見てくれた。楽しい音楽になると身体全体でうれしさを表している子がいた。そういう背中を見ると、胸が熱くなる。
お弁当を食べ、短いダメ出しをして、気をつけて旅に行ってらっしゃい!と、皆と別れ、座に戻り、Aスタにて「注文」の稽古。
「森」の稽古が終わったので、昨日から「注文」組がベニサンからAスタへ移動したのである。
伊藤多恵さんはBスタで「あおくん」の稽古を見た後、Aスタへ来て、「注文」組の「ボレロ」をチェック。
「ボレロ」というのは、あのラベルの「ボレロ」である。5分にまとめてあって、歌い踊り狂うのである。なかなか一般のお客様に見ていただくチャンスがないのが残念であります。
夜は演出の伊藤明子さんが来て「注文」。今回は今までキャストだった井村クンが演出助手をつとめ、キビシイ目を光らせている。

3月8日
Bスタにて「あおくん」の通し稽古。制作メンバーもズラッと見に来る。
ピアノの湯田ちゃんも「遊びの達人」になってきた。ナベさんは時々、声が大きすぎます(笑)。この作品では手拍子がとても大切。細かなチェックをして、夕方には終わり、ばらして、ハイエースに積む。
クルマのことを言えるば、「森」が座の4トントラック2台。「あおくん」が座のハイエース。「注文」がレンタカーの2トントラックである。
私は夕方から、制作の忠地あずみと山崎亜季と、海外公演「ピノッキオ」の打ち合わせ。助成金がもらえれば、5月に新作を引っ提げてアジアツアーを行なう予定。

3月9日
Aスタにて「注文」の通し稽古。
制作その他ギャラリーの見守るなか、無事通し終了。
昨日は注文の稽古を見なかったが、この一日でずいぶん変わったのでびっくりした。
ダメ出しのなかで、また変更もあり。
どんどんおもしろくなってきているので楽しみである。
そして私は明日の「あおくん」初日のために大阪へ向かう。夜11時に豊中のホテルに到着。仕込みを終えた石窪朋、西田玲子、ピアニストの湯田ちゃんを呼び出して、ビールで初日の前祝い。

3月10日
宝塚ソリオホールにて「あおくん」のゲネプロと本番。主催は宝塚ファミリー劇場という名のおやこ劇場。私は30年近く前に公演したことを思い出した。そのころはバスで寝泊まりする旅だった。
さて、パンチカーペットの上での上演なので、青や黄色の水をこぼしはしないかと、朋ちゃんが心配している。
とても小さい子がたくさんいて、白いコーンを被った西田玲子がロボットみたいな動きで登場すると(これは、携帯電話のスイッチを切ってください、というメッセージなのだが)、「恐いから帰るーっ!」と泣き出す子がいた。
本番が始まると会場の雰囲気も良く、とても良い初日だった。
湯田ちゃん、こんにゃく座ピアニストデビューおめでとう!
朋、西田はハイエースで移動。他のメンバーと私は新幹線。皆は名古屋で降り、次の公演先へ。私だけ帰京した。

3月11日
自宅で一泊!そして「注文」の初日を見るため長野新幹線に乗る。
軽井沢のあたりで窓から美しい雪景色。雪と言えば、「森」組のトラックは雪解けのグランドのぬかるみにはまり、大往生したとか。「あおくん」組もこの後青森へ行くので、タイヤをスタッドレスに変えるとか。
さて「注文の多い料理店」のゲネと本番。
演出の伊藤明子さん、照明プランナーの成瀬一裕さんも立ち会っての初日。若里市民文化ホールは響きもよく、客席後方から始まるパレードも気持ちよく鳴り響いた。
ゲネプロでは少しテンポがぎくしゃくしたところがあったが、本番はしっくりいっていた。
パネルの扱いその他、段取りの多いオペラだが、バタバタせず落ち着いて、しかも楽しく展開できたと思う。


フーッ!これで三作品めでたく旅初日を終えることができた。
この後の旅も、病気、ケガ、事故に気をつけてがんばってね。
私はいよいよ「ピノッキオ」の作曲にとりかかります。
以上、ご報告でした。
長い文章読んでくださってどうもありがとうございました!

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