オペラ『白墨の輪』稽古場日誌(1月24日):沢井栄次

本日は小道具師まろりんが今回2幕で使用される「六法全書」の製作を順を追って解説いたしましょう。

「そうそう、辞書とか小道具で作りたいんだけど、どうやって作ったらいいか困ってたんだよな。」というアマチュア演劇、高校演劇道具係の諸君にお伝えしたいと思います。


今回の六法全書は

・女性でも持てるほど軽い。
・本を縦や横にした状態で人が座る。
ページが開く。

(ページが開くについてはオーダーの情報錯綜だったらしく、実際のお芝居では開いて使わない可能性があります。)

という3点がテーマでした。
では順を追って行きましょう。


1.まずページの元になるデータをパソコンのWord等で打ち出します。
運良く今回はグルジア文字のフォントが手に入ったので、Google翻訳を利用してグルジア語になっております。左は辞書の表紙用。右はページの中身です。
書いてある内容は国語辞典のカ行のグルジア翻訳です。



2.本の材料はシナベニヤ5mm厚が2枚、ウレタンスポンジ1cm厚が2枚、発泡スチロール50mmが2枚です。シナベニヤはラワンベニヤより軽くて強度があるので採用しました。



3.まずは中身から作っていきましょう。発泡スチロールの側面に縞模様の生地を貼り付けます。なぜ縞模様かは後になったらわかりますよ。



4.側面に生地を貼り終えたら今度はコピーした中身のプリントを両面テープで貼ります。3.4.の作業を繰り返し同じものを2個作ります。



5.別に同じ両面コピー数枚分をマスキングテープでつなぎ、つないだ部分に布を置いて縫い付けます。補強のために白い木工ボンドを付けて更に布とくっつけます。



6.4.で作った2つの間に5.をはさみ、辞書の背中部分で布と発泡スチロール部分をつなぎ布テープ(ガムテープ)でくっつけます。布テープは強度と粘着力が強く、舞台ではよく使います。



7.これが発泡スチロールと紙のページをくっつけた状態。これで布を貼った意味がわかりましたね。そうです。辞書の分厚い紙の部分だったから縞模様の布だったんですね。



8.それでは辞書の外側部分を作りましょう。シナベニヤを表、背、裏部分を並べて合皮で包みます。ベニヤと合皮の間にはウレタンスポンジを挟んであります。これで高級な辞書の分厚い表紙感を出します。
ベニヤが骨となって本に座っても荷重に耐える構造になっています。今回はページを開けるようにするため、背の部分は縦に2分割しています(写真中央の白い部分)。革の角の処理は難しいですが、数mm間隔でハサミで切り込みを入れるとうまくいきます。



9.G17ボンドで革を貼りましたが、ここでも補強のために布テープを使います。



10.それでは中身と表紙を合体させましょう。両面テープを使いました。
背中部分はG17ボンドです。



11.これで辞書の完成。この辞書の寸法は41*30*12(cm)という大きいものです。



12.最後に表紙と背部分に金文字を入れます。1.にあった紙をデザインナイフで切り抜き、紙をセロテープで貼ってステンシルのように金の絵の具を真上から少しずつ叩いて着色します。
筆を撫でるとステンシルが崩れますので上から少しずつ絵の具を載せていく感じで辛抱強くやるとうまくいきます。これで完成です!





他にもこんなものを作っています。
使い古した缶を腰にぶら下げるということらしいので、100円ショップで灰皿を買ってきて表面をヤスリがけして塗装を剥がし、絵の具でコップの酸化とサビを書いています。写真を拡大してコップの内側と比べてみるとよくわかるでしょう。



この他にもまだまだたくさんの小道具が登場しますが、小さなものから大きなものまでひとつひとつ手作業で作られています。目立たない存在ですが道具にも注目して舞台を観てみるとまた楽しさが倍増するかもしれませんよ。

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