オペラ『おぐりとてるて』ー説経節「小栗判官照手姫」よりー
2015年12月ツアーメンバー紹介
≪キャスト≫
小栗ほか:島田大翼
Shimada Daisuke
なんでもできる男・島田大翼が、何も恐れぬ男・小栗を演じる。蛇に巻かれるシーンの色気や、照手との手紙のやり取り、鬼鹿毛を乗り回す姿など、美しさや迫力の見所はもちろん満載。でも餓鬼阿弥となった時の弱さ、痛々しさ、見る者に守らなければと思わせるその様子が、この作品の魅力をぐっと引き出していると思う。稽古の合間には旅の道具をひょいと直したり作ったり、本当に賢くて何でもできてしまうひと。
照手姫ほか:太田まり
Ota Mari
照手姫を演じている時は、普段の本人からは想像もつかないほど美しく光り輝いている。それなのに常陸小萩となり餓鬼阿弥を引く時には、不思議と、美しい照手姫よりも更にもっとずっと美しく見える。他人のために必死で何かをする、という行為が、本人の人となりと重なって輝きを放つのかもしれない。
兼家、横山、閻魔大王、藤沢の上人ほか:大石哲史
Oishi Satoshi
そこはかとなく可愛いらしい閻魔大王や意地の悪い横山ももちろん魅力的なのだけれど、なんと言っても藤沢の上人を演じている時のこのひとは、今まで見たどんな役よりも格好良い。お寺の息子だからなのかなんなのかはわからないけれど、餓鬼阿弥を最初に引いていく、その意志、その声、その表情。とてもビリビリさせられる。
大蛇、占い師、宿女将ほか:岡原真弓
Okahara Mayumi
恐ろしい大蛇の恐ろしい目つきや、おかしな占い師のおかしな目つき、その大きな目は口ほどに物を言う。もちろん口もたくさん物を言って、稽古中も普段の生活でも、いろいろなことをバリバリと仕切って進めていく。宿女将のように、若手を厳しく育てつつ、実は涙脆くて優しさに溢れ、気配りもできてしまう素敵な大御所。
後藤左衛門ほか:佐藤敏之
Sato Toshiyuki
商人の良い声が聞こえたと思ったら、受身の激しい音をたて、足を踏み鳴らす、なんとも大音声のパワフルなひと。リアルにとても重い千駄櫃を軽々と担ぎ、華麗にステップを踏む。力強いのに軽やかなこのひとは責任感がとても強く、仕事を引き受けたら決して放さない。どんなに時間がかかってもきちんとやり遂げる、義理堅いひと。
鬼王、万屋主人ほか:富山直人
Tomiyama Naoto
鬼王も万屋主人も、厳つく見えて実は人情派。本人もパッと見こわそうだけど、本当は周りのひと思いの人情派。面白そうなことを思い付いては実行してみんなを笑顔にする。階段の上で、鬼王の使う竹竿を尺八のように吹き鳴らしていた時は、面白いを通り越して格好良かった。
説経師一、三郎、村君の太夫ほか:高野うるお
Takano Uruo
最近よく「小者感が最高」と言われているこのひとの演じる三郎は、本当に小者っぽさが溢れ出ていてついつい笑ってしまう。本人も稽古中には自分で面白くなってしまって笑い出してしまうこともしばしば。でも説経師として語り始めるシーンや、物語の終わりに一人で歌うところは、「語り」に耳を傾けさせる強い何かを感じさせて、それはそれはぐっと来たりする。
千手観音、姥ほか:彦坂仁美
Hikosaka Hitomi
どんなときにも感謝の気持ちを忘れないこのひとの演じる千手観音は、とても慈愛に満ちた目で照手姫を見つめる。照手が護られていることを感じて、その光景を見ているだけでとてもほっとする。この写真を待ち受けにすると幸せが訪れるという噂はあながち嘘ではないかもしれない。そう思わせてくれるほど、幸せが溢れているひと。
小栗の家来、鬼次、上人の弟子ほか:北野雄一郎
Kitano Yuichiro
家来や弟子や弟や、ひとをサポートする立場の役ばかりが集まってくるのは、きっと本人の底抜けの優しさゆえ。本番中は特に着替えが多くて、タイムを測りたくなるほどいつも走り回っている。小栗復活の時にはちゃんと閻魔大王の脇立ちを務めているからまた楽しい。物語の終わりに一番の格好良さを発揮する、こんにゃく座一のイイ男。
兼家の妻、大蛇の美姫、視る目とうせんほか:川中裕子
Kawanaka Yuko
美しく妖艶なヘビ女を演じたかと思えば、とてつもなく賑やかな目玉坊主になって走り出す、あまりに壮絶なそのギャップに度肝をぬかれる。普段のこのひとはどちらかというといたずらっ子な面が強い…ようでいてふんわりとした空気を纏い、更にどっしりとした逞しさも持っている。やはりギャップの魅力的なひと。
≪楽士≫
(写真左より)
打楽器:高良久美子
打楽器奏者は打楽器だけでなく、振ると音の出る楽器や、擦ると音の出る楽器や、とても楽器とは思えない物まで楽器にして演奏してしまうからすごい。そんな楽器たちをワイルドかつ繊細に操る、おおらかなひと。
ピアノ:服部真理子
引き締めたり緩めたり、巧みに役者を、演奏者を率いていく魔術師のようなひと。ゴージャスな印象そのままに、踊り舞うピアニスト。料理も上手で、魚の煮付けは逸品との噂。
サクソフォン:林田和之
ソプラノからバリトンまで、4本のサックスを持ち替え奏でる、お話好きのお父さん。バリトンサックスで演奏する小栗の横笛は、低音なのになんだか本当に笛のような感じがして不思議な魅力に満ちている。
≪スタッフ≫
制作マネージャー:西田玲子
Nishida Reiko
演出助手として明るく厳しく稽古場を率い、朗らかにみんなをまとめていた。楽士さんが揃うまでは打楽器も演奏しながらだからすごい。旅に出たら制作マネージャーに変身し、これまた楽し気に運行を仕切る。どんな時にも滲み出るなんとも言えない明るさは、いつだって周りの人を元気にする。
舞台スタッフ:熊谷みさと
Kumagai Misato
この作品の初演では衣裳部として働いていた。その頃とても苦しんだ、作品に出演する女たちの鬘を梳いたり結ったりすることが、今はなんだか楽しくなってしまい、来年からも毎回ツアーの始めには鬘を結いたいと思っている。けれど今は舞台スタッフなので、手に握るのは櫛ではなく金槌や丸ノコ。でもそれはそれでまた楽しい。
舞台スタッフ:壹岐隆邦
Iki Takakuni
言いたいことはたくさんあるのになかなか伝わらない。そのもどかしさを抱えて今日も長身がゆえの人より早い夕方を迎える。旅先でいろんなところへ散歩するのが好きで、そして見つけた面白いものを写真に撮って見せてくれる。伝わらなくても伝えようとしてくれる。その思いとへこたれなさは尊敬に値する。
オペラ『おぐりとてるて』ー説経節「小栗判官照手姫」よりー
2015年12月ツアーは、以上のメンバーでお送りいたします。
写真:姫田蘭/文章:熊谷みさと
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