~番外編~遠野旅行記 秋編:冬木理森


『遠野物語』の原作を読むとやっぱり気になるのは、こんな不思議な話のたくさんある遠野は一体どんなところなのか?ということ。
思い立ったら行動!と、9月に現地へ行ってしまいました。
せっかくなので、遠野の様子を少しお見せできたらと思います。

遠野駅前の観光案内所で電動自転車を借り、
『遠野物語』の語り部 佐々木喜善の出身地 土淵方面に向かって、関連のスポットをいろいろとまわっていきました


遠野駅前には柳田先生の有名な序文が。
「願わくばこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」


遠野に来てみてすぐ感動だったのが、美しい山々や田んぼや川の風景。






ずっと遠野独特の空気が流れていたのですが、スポットの鳥居を潜ったりするとまた空気が変わります。





「ああ、これはいるなあ…」という感じ。
田んぼ道や、塗装されていない細い山道を歩いて登らなければならないスポットもたくさんあって、足がパンパンになりました。

そして田舎の夜は早い。
施設やお店が閉店すると更に静かな時間がやってきます。
初日に「五百羅漢」を訪れた際には、山中で迷子になって、日が暮れて遭難しかけるという事態に。


もちろん圏外で大ピンチ。
自分の手も見えないような暗闇の中、スマホのライトで足元を照らし、
茂みから聞こえる、謎の音や鳴き声の恐怖に負けないよう、楽しい歌を歌いながらなんとか下山しました。


遠野駅から約9km、土淵の山口にはまだ佐々木喜善の生家がありました。


ダンノハナと呼ばれる集合墓地には佐々木喜善のお墓もありました。


ダンノハナの対岸にある、「デンデラ野」。


遠野は飢饉の多い土地で、生きていくのには大変厳しい土地でした。
昔、60歳を超えた老人はこのデンデラ野に追いやられ、昼間は農作業を手伝いに人里に降りてきて(ハカダチ)、僅かな食糧を得てまた野の小屋に帰っていく(ハカアガリ)という暮らしをしていたとか。


老人たちは村の生活に寄り添いながら、命の果てるのを静かに待ったそうです。

先ほどの五百羅漢も、天明の大飢饉による餓死者を供養するために大慈寺の和尚が数年をかけて、500体の羅漢像を山中の自然石に彫り刻んだもの。


昔の遠野は今よりも平均気温も低く、度々凶作に見舞われ、娘を身売りに出す農家もあったそうです。


『遠野物語』の中の話で、2人のザシキワラシが出て行った直後に没落してしまった、山口孫左衛門の家のあったところもすぐ近く。
今も井戸と墓の跡が残っているのですが、畑のど真ん中にあるらしく、残念ながら踏み入れることはできなかったです。
この石みたいなやつですね。





遠野の民宿では、ザシキワラシの出る部屋や場所というのがあるそうです。そこに泊まった客は、夜中に子どもの声や、走り回る足音を聞いたり、人魂を見たり、しばしば不思議な体験をするとか。



伝承園にある佐々木喜善記念館。



「広い日本の中には 実際どんな珍しい宝玉が
どんなに多く土の中に埋没されているか
其れを掘り起こさねばならぬと思ひます。
佐々木喜善」



伝承園にある千体「オシラサマ」。
馬と娘という組み合わせの夫婦のお話。


ある娘が家で飼っていた馬と愛しあい、ついに夫婦となります。それを知った父親は怒って、馬を桑の木につり下げて殺してしまいます。娘は嘆き悲しんで、馬の首に縋り付きますが、さらに怒った父親は馬の首を斧で切り落としました。するとその娘は馬の首に掴まったまま、天に昇って消えてしまったそうです。

馬をつり下げた桑の木から、娘と馬の一対の神の像が作られ、それがオシラサマとなりました。
ザシキワラシ、オクナイサマのように家の守り神として祀られるとともに、蚕・農業の神様ともされています。狩猟をする際には、その日向かうといい方角を教えてくれたりする、「お知らせ」の神様でもあったとか。


今でもオシラサマの祭日には、新しい衣服を像に着せたり、祭文を唱えながら、オシラサマを振り舞わす「オシラアソバセ」という行事があります。

伝承園では、360度 壁ぎっしりのオシラサマにお願いごとを書いた布を着せることができます。
オペラ『遠野物語』がいい舞台になるよう、祈ってきました。




「サムトの婆の碑」

神隠しにあった娘が、30年後に老婆になって帰ってくるお話。
遠野では、とくに若い女性や子どもが突然「消えて」しまうことはよくあったそうです。


美味しいものも食べられました。
遠野で「焼肉」といえばジンギスカンらしいです。





囲炉裏ご飯、最高ですね。
どぶろくも初めて飲みました。お米感がすごい。


遠野はどこもかしこもカッパだらけ。
カッパに注意!の標識


カッパ淵ではキュウリでカッパ釣りができます。
許可証が必要で、ゴールド免許もあるみたいです。




交番もカッパ!


狛犬もカッパ!


本当にどこも想像力を掻き立てる風景ばかり、
遠野の美しいところも恐いところも体験できた、素晴らしい旅でした。





2日間でその不思議な魅力にすっかり取り憑かれてしまった私は、年末年始に再び遠野を訪れることとなります。

遠野の旅、冬編に続く。


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