オペラ『銀のロバ』稽古場日誌(4月29日):島田大翼

オペラ『銀のロバ』、萩さんから少しずつ楽譜が届いていましたが、本日ようやくすべて揃いました。つまり作曲完成ということです。お疲れ様でした。

萩京子先生と「銀のロバ」
寝てない萩さん。

今回も、楽しくも切ない音楽が溢れています。次々と出てくる歌を覚えるのは大変ですが、新しい音楽に会えるのはいつもわくわくするものです。ボケーっと書いていたら文章が長くなったのでなんなら以下読み飛ばしてください。

今回の楽譜には、四度+四度の跳躍を何度か見ました。「ジャックのロバは~」とか「ルース婆さんヘイゼルだけが~」とか「さらに重くさらに暗く~」とか…これが意図あっての作曲かはわからないのですが、これはどういうことだろうな、と思いながら歌ったりするのも楽しいことです。
前に四度+四度というのを意識したのは林さんの『ロミオとジュリエット・瓦礫のなかの』の、ロミオとジュリエットが別れる場面での「さようなら、さようなら」という歌でした。なかなか歌うのが難しいのです、この音程は。同じ音程が均等に並ぶからでしょうか。
何にしても均等というのは何故か歌うのが難しいもので、長二度の連続なんかも大変です。今回では「森の妖精!」という部分に長二度+長二度+長二度という部分がありますが、これなんかは特に歌いにくいです。増四度という音程は全音が三つ重なるので、トリトヌスという名前がついています。中世期には悪魔の音程とか言われて禁則扱いだったそうです。
この前の『アルレッキーノ』では登場して三小節目からこの全音三つというのが出てきました。萩さんは一般的に使われる長音階と短音階(イオニアン・スケールとエオリアン・スケール)に加えてドリアン・スケールやミクソリディアン・スケールという教会旋法に近いものをよく使われるので、それにともなってか、この全音三つというのも多く出てきます。
今回の「森の妖精」のくだりもミクソリディアン・スケール的に、導音になるべきト音が半音下がった状態とも聞こえます。アルレッキーノの登場の部分はまたべつの状態で、これは全音音階の一部といえるでしょう。全音音階は鉄腕アトムの主題歌の前奏の部分のあれです。ドビュッシーの音楽にもよく登場します。ちなみに『ガリバー』の「まず押入れから~」という部分なんかは、アルレッキーノの登場と同じようなフレーズを使ってはいますが、こちらはドリアン・スケールの匂いがします。
長三度+長三度なんかになるとこれは更に特殊で、さすがにほとんど歌ったことがありません。『カルメン』の「セビリヤの砦の近くに」で聞いたことがあるくらいのものです。これは重ねれば増三和音というものになります。『銀のロバ』では「煙と土埃のにおい」という部分でピアノが低音でこれを鳴らします。その中から自分の歌うべき音を探すのにはじめ苦労しました。今は少し慣れてきました。
苦労といえば最後に出てきた楽譜にあった和音は四度+四度+四度という恐るべき和音で、今はこの中から自分の歌う音を見つけることができず苦労しています。暗闇を手探りで進むような感覚で…そういえばその場面はまさに暗闇のシーンです。これは「暗闇を手探りで進め」という作曲上の演出(!)なのでしょうか?

宮瀬くんはこの日の未明、東京湾で釣りをしていたそうで、メバルを揚げたり煮付けたりして差し入れしてくれました。

宮瀬晃氏とメバルの唐揚
ありがとう。

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