高岡由季出演!あやめ十八番第十七回公演 音楽劇『金鶏 二番花』(7月7日〜13日):熊谷みさと

オペラ『あん』の島根県ツアーがおわり帰京した翌日、行ってまいりました、座・高円寺。



彦坂さんの座日記の、そのもう片方の公演、座・高円寺1での、あやめ十八番による音楽劇『金鶏 二番花』を観るためです!



あやめ十八番といえば場面が交差していく巧妙なお芝居づくりで有名ですが(私個人の見解です)、今回は音楽劇ということで高岡由季さんがアコーディオン弾きで出演していました。

お話は、日本のテレビジョン実験放送がはじまったころ、テレビの現場とそのまわりに渦巻く人生を照らす物語。

脚本演出の堀越涼さんがパンフレットに「テレビは親しかったのにもう会わなくなってしまった友達のようだ」と書いていました。小さな頃はテレビが最大の楽しみだったのにいつしか見なくなってしまった、と。本作はその古い友人の物語でもある、と。
私は、それを読んでいっそうわくわくしました。

私は堀越さんとは逆で、小学生の頃はあまりテレビを自由に見ることが許されておらず、その反動というわけではないのですが、今はもうテレビ無しではいられない超絶テレビっ子…いやテレビ大人です。
ドラマは「今期は見た本数少なめだったな」と思っても数えてみたら大抵二桁は見てるし、バラエティやお笑いのネタ番組を真剣に見て1人でゲラゲラ笑っています。なんだこの番組!と怒ったり、素晴らしい番組をありがとう!!と感謝したりしています。
そんな今の私の大親友であるテレビが生まれた頃のお話。そんなのそれだけでも大切なお話に決まってます。

先述したとおり、場面が交差して複雑に入れ替わっていくあやめの物語ですから、会場に入った途端、舞台のつくりがとっても気になります。
背景を覆う大きな白いカーテン、サイドには衣裳をかけるシュテンダーが置かれ、NHKと記された箱馬が積んである比較的シンプルなセット。頭上に大きな円盤が吊ってあって目を引きます。
あのカーテンが開くのかな、楽隊はどこに座るのかな、といろいろ妄想しているなかでの開幕。

黒柳徹子さんが、いや黒柳徹子ではないのか。いやでもあれは黒柳徹子さんでしょう。とにかくその方が対談をしていて、しているうちにおばあさんだった対談相手がどんどん若くなって時代が戻っていって、あっという間に華やかなミュージカルシーンになります。

楽隊は下手奥のカーテン裏のスペースで演奏していました。
効果音もすべて生音にこだわるあやめの楽隊。
高岡さんは立派に、始終楽しそうに演奏したり歌ったりしていました。
主役の喜代子さんのお姉さん役ということで、楽隊ポジションを離れてお芝居の中に入って会話をするシーンも。
そして楽隊として演奏する合間、ほかのひとが歌ったり踊ったりしたりしている場面ではそれを満面の笑みで眺めていたり、この舞台が好きな気持ちが全身からダダ漏れしていました。一番近くで全公演見られる幸せ者ということですね!


喜代子さん(金子侑加さん)と千代さん(高岡さん)


楽隊のみなさん

シンプルに見えた舞台装置も座高円寺のフレキシブルなしくみを活かして立体感をみせていて、いろんなこと考えられてるなあと思いました。

たくさんの物語が交差する中で一番私の胸を締め付けたのは、照明さんに恋するアナウンサーが日光網膜症になってしまうところ。その子を美しく見せたい思いで光量を増す照明、自分を照らしてくれるのが何より嬉しいのに明かりを見続けることができない葛藤…切なすぎました。
最初の踊りで華やかに目をひいてたあの子がこんなことになるなんて。かなしい。なんて残酷なんだ。
めちゃくちゃゆさぶられました。

そして、あるきっかけで書かれた詩、歌われたひとつの歌が、いろんなところでたくさんのひとの人生を救って、暗闇を照らす松明となって、めぐりめぐってまた自分をも照らす光になる、そんな世界が温かくて眩しくて胸ぐらを掴まれながら抱きしめられるようなそんな気持ちになりました。伝わるのかなこれ。伝われ〜
自分も誰かの松明になれるようにがんばりたい、暗闇に灯す明かりになりたい。きっと誰もがそんな気持ちになれるような作品でした。前向きな、強いちから。
その松明が誰かの目を焼かないように、誰かの松明に目を焼かれないように、ひっそりと気をつけながら。でも焼かれてもいいと思えるほどの松明に出会えることもまた幸せなことでもありますよね。伝われ。

そして、今まさに私の生活を明るくしてくれているテレビをつくってくれたひとたちに、改めて大きな声でありがとうを伝えたくなった日でした。
もちろんテレビばっかり見てないで舞台もいっそうがんばってゆかねばです!!!

この公演は7月末まで映像配信もしているそうですので、気になった方はこちらをどうぞです。

そうそう、そして、今回の音楽劇『金鶏 二番花』の姉妹作品である、草創記『金鶏 一番花』が9月に上演されるそうで、そちらには島田大翼さんが出演されるとのこと!そちらも楽しみですね。



高岡さん、ご関係のみなさま、良き時間をありがとうございました!!お疲れさまでした!!




0 件のコメント: