京子の旅日記(10月1日)

2009年10月1日(木)萩京子

ブダペスト公演2日め。
全員の集合は16時なので半日観光ができる。
王宮ツアー、動物園ツアーなど。
(全員の動きは把握できていません。)
私は楽士チームと音楽家系照明家の成瀬さんとともに、バルトーク記念館に行く。
バルトーク記念館はブダ側の郊外にあり、地下鉄とバスを乗り継いで、さらに少し歩かないとたどりつけないところにある。
コーディネーターの桑名さんの車とタクシーに分乗してでかける。
見晴らしの良い気持ちの良いところで、建物もとてもきれいだ。
実際にバルトークが暮らしていた建物で、静かな住宅街のまんなかにある。
バルトークが使っていたベーゼンドルファーのピアノやテーブルや椅子を興味深く見る。「こんな気持ちのよい部屋なら作曲がはかどるね。」などなど寺嶋、萩はつぶやく。
昆虫や草木の採集などもある。
ファーブルさんのようだ。
2階のフロアはコンサートができる空間になっていて、クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのトリオがリハーサルしていたのを、のぞかせてもらう。
お昼から本番とのことで、外には高校生がたくさん集まっている。
一種の芸術鑑賞教室のようなことらしい。

バルトーク記念館に来てあらためて、ここがハンガリーだということや、自分が音楽家である、ということを思い出した。
ということを皆に言ったら、おおいに笑われてしまったが。

楽士諸氏は王宮へ。私も王宮へ行ってみたかったが、あきらめて劇場へ。
劇場近くで、海外ツアーには参加していない『変身』スタッフへのお土産の買い物。



伝統的な刺繍のテーブルクロスやフォアグラの缶詰エトセトラ・・・。
それから、劇場のラウンジで旅日記を書く。
そうこうしているうちに集合時間になる。
舞台監督の凡平さん(最近はミスター・ボンと呼ばれている。)より、バラシ、積み込みの説明。
公演が始まってしまうと、もうあっという間に終わりが近づく。
そこへ、演劇評論家の七字英輔さんが登場。
私たちは東欧ツアーを計画するにあたって、七字さんにはいろいろご相談にのっていただいた。
七字さんは今回名取事務所の東欧ツアーに同行してオーストリア、ハンガリーをまわってブダペストに着いたところだということで、わざわざこんにゃく座を訪ねてくださった。

さて、開場前に45分間くらい稽古をする。
昨日の本番はとても良かったが、一幕をもっとひきしめるとさらに良くなると思う。

さて本番。
昨日見てくださった方の口コミもひろがり、今日は椅子を追加して出すことになった。
ほぼ満席だった。
昨日よりさらに反応があり、笑いもたびたび起こる。
音楽もとても良い流れだ。
これはバルトークのご利益かな。

拍手は手拍子になり、3回のカーテンコール。
大石の挨拶。
「ブダペストで公演できてうれしかったけれど、もう明日はバイバイです。」
これには客席も大受け。
通訳さんと座員およびスタッフはずっこけた。
「こんにゃく座がまたブダペストで公演できるように、みなさん協力してください。」
これにも一同大受け。
小さい空間がよりフレンドリーな雰囲気になり、恒例の送り出し。
その後、メルリン劇場のディレクターの申し出で、皆衣裳のままシャンペンで乾杯する。
ディレクターは今日の公演に対して、「今年はハンガリーと日本の交流と記念する年で、たくさんの日本の舞台作品がこの劇場で上演されるが、今日は格別すばらしい舞台だった。ヨーロッパで生まれた小説をもとにした作品をあえて上演した勇気を称えたい。鏡を見ているように感じた」ということを言われた。
こちらからは「日本の伝統的なものも知ってもらいたいと思うが、私たちは今回一番新しい日本の作品を見てもらいたいと考えて『変身』を持ってきた。そのことを受け止めてもらえてうれしい」とお礼のことばを述べた。

さらにその後、ラジオ局の取材が入った。
インタビューアーの女性はまず、気持ちが高揚しているのでうまく伝えられないが、今日の舞台にとても感動した、と言ってくれた。
そしてするどい質問。
なぜ『変身』を持ってきたか。
なぜ東ヨーロッパで公演しようと考えたか。
ユダヤ人の問題、ホロコーストのことを日本では話題にするか。
最後の「出発」にどのような意味を込めたか。

こちらが伝えたいことを質問してくれるので、とてもうれしいし刺激的だ。
作品を見た直後にこのようなインタービューができるジャーナリストの質の高さに脱帽した。

バラシ、洗濯、パッキング、積み込み、そしてトレーラーを皆で押してバスと合体させ、終了!
基本的には皆、バリさん運転のチャーターバスでホテルへ帰る。
劇場の近くでさらに飲みたいメンバーは別行動となった。
私は劇場近くのカフェ組です。
通訳さんたち、そしてお友達のピアニストらと飲んだ。
通訳さんたちをねぎらいたいのに、お店ではオーダーや支払いなど、どうしてもお世話になってしまう。
みなさん、ほんとうにありがとう!

0 件のコメント: