京子の旅日記(10月2日)

10月2日(金)萩京子

ハンガリーからオーストリアへの移動。
出発は10時。
私はどうしても中央市場を見ておきたかったので、相ちゃん(相原智枝)と朝6時半にホテルを出て、地下鉄に乗って市場へ向かった。
相ちゃんはおみやげを買う目的で、私はただ市場が見たかったから。
私は市場とか郵便局とか駅がとても好きなのである。
市場は6時から開いている。
一階が野菜、肉など。
地下が魚介類、それから各種酢漬けコーナー、その他いろいろ。
隅の方に鹿の肉らしきものも売っていた。
角の大きい鹿の絵が書いてある。
肉も黒っぽい。
2階の民芸ものコーナーはほとんど開いていなかったが、各階いろいろ見て、大満足して、ちょっとサラダバーのようなコーナーで、野菜サラダを食べてホテルに戻る。
同室の岡原はヴァイオリンの手島さんと早朝温泉。

10時、バリさん運転のチャーターバスで出発。
今日はハンガリーとオーストリアの国境を越える。
いつかオペラにしたいなあ・・・と思っている小説、アゴタ・クリストフの『悪童日記』の舞台がハンガリーとオーストリアの国境の村なので、興味深く景色を眺める。
と、↑このように書いておくと、オペラ化の実現性が高まることを祈って(笑)。

バスはずんずんと進み、国境の手前、ギョールという町の大型スーパーで昼食となる。
またまた皆、ハンガリーのお金フォリントを使い果たそうと苦心する。
スーパーでは手押しのカゴを借りる際にコインが必要で、戻すと帰ってくる。
面倒くさいのでカゴなしで買い物しようとしたら、結構大変だった。
レジ袋もほとんど有料だ。
ルーマニアのスーパーではリュックで入ってはいけないところがあり、リュックで入るとリュックは透明なビニール袋にパッキングされてしまう。
いろいろおもしろいです。

さて国境だが、実にさっぱりしている。
高速道路の料金所が無人化したような感じ。
ETCで通過というぐらいの感じです。
ノーチェックだった。
と思いきや、すぐに入ったガソリンスタンドに駐車中にちょっとしたお調べが入る。
だが、パスポートチェックはなし。

国境を越えると、ウィーンは間近だ。

東ヨーロッパのおもしろさ。
東ヨーロッパには東からの目線、という意味でアジアの東の端の日本と共通するものがあると思う。
西からの影響を受けながら、最終的には西を目指すのではなく、東独自の質をみつけていく。
経済的な困難さを伴いながら。
ルーマニア、ハンガリーには、とても親しみを感じた。
そして今、オーストリアへ入ってくると実に表玄関に近づいた、という感覚がある。
音楽の都と言われているウィーンで勝負する、という気負いがないこともない。
だが、実はそんな勝負、という感覚よりも、いよいよ楽しさが増してきた。
というのは、西洋音楽の伝統のどまんなかで、日本でつくられたオペラ「変身」を見てもらうことの成果が、はっきり見えてきたからだ。
ブダペストのディレクターが言ってくれたように、オペラ「変身」はヨーロッパの人たちにとってかなり刺激的であり、私たちの公演は彼らの鏡としての機能を持った。
私たちにとっては、自分たちのやってきたことを再認識、再発見するチャンスでもある。

旅の行程のちょうど真ん中。
移動中はいろいろ考えることができる。

16時すぎにウィーンのホテルにチェックイン。
制作の麦と舞台スタッフは、バスで劇場に向かい、コンテナーを切り離して帰ってくる。
今日は見ることはできないと言われていた劇場の内部も見ることができたそうだ。
歌役者諸氏はフォルクスオパーに「ガイズ・アンド・ドールズ」を見に行った。
19時、萩、土居、田上、志賀さんは、ウィーンのコーディネーターの片山さん、通訳の千野さん、野村さん、お手伝いに神戸からかけつけてくださった太田美佐子さんらと、打ち合わせを兼ねた食事をする。
ホテルの近くのボヘミアンレストランだった。
プラハ風スープというのを頼んだら、内蔵入りのすごい迫力のある代物だった。
元気が出てくる。
打ち合わせ終了後、萩は速やかにホテルに戻り、たまには早めに寝ることにした。

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